「三世諸仏も般若波羅蜜多に依るが故に、
阿耨多羅三藐三菩提を得たまえり」は、主語が「三世諸仏」となっているだけで、前の文章と意味はほとんど同じです。前の文章では、「菩薩」が般若波羅蜜多によって涅槃を得る、というのですが、ここでは「三世諸仏」が悟りを得るというのです。
「阿耨多羅三藐三菩提」は、サンスクリット語の「アヌッタラ サムヤック サンボーディ」を音写したものです。「無上正等覚」と漢訳しています。「この上なく正しい完全な悟り」という意味です。
「三世の諸仏」というのは過去・現在・未来の諸の仏のことです。仏教の歴史において仏といえば最初は「釈迦牟尼仏」ただ一仏でしたが、時代が下がるにつれて、多くの仏が説かれるようになります。
私たちが住んでいる世界以外の世界にも仏がいても不思議はないということで、四方八方に上下を加えた十方の世界にも仏がいると信じられるようになります。もっとも有名なのは、西方極楽浄土の教主阿弥陀仏でしょう。
阿閦如来、薬師如来なども有名です。
自分が悟った八正道は過去の仏たちがたどった古道・古径である、とお釈迦様が示しておられます。(『相応部経典』一二―六五)お釈迦様以前にも仏はおられたし、未来にも出られるはずだという信仰が自然に生まれてきます
。
このように「三世十方の仏」が説かれるようになります。
菩薩だけでなく、三世の諸仏も般若波羅蜜多によって悟りを得ると述べることで、般若波羅蜜多の普遍性を強調したものと思います。
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