今日本人に一番人気のある有名なお経といえば、やはり『般若心経』でしょう。私ども曹洞宗のお寺でも読経しない日はありませんし、浄土真宗と日蓮宗を除く他の宗派でも、読経するようです。また写経と言えば『般若心経』というくらいポピュラーです。さらに、少し大きな書店に行けば、宗教書や仏教書のコーナーには必ず『般若心経』に関連した書籍が置いてあります。『私の般若心経』、『般若心経を読む』、『般若心経に学ぶ』、『般若心経講義』などといった題名が目をひきます。著者も、高僧や学者、科学者、作家、漫画家、弁護士、経営 コンサルタント、新宗教の教祖など多彩な人物が名を連ねています。
これほどにも一般民衆に愛され、話題にされるお経は他にありません。『般若心経』の人気の秘密はいったいどんなところにあるのでしょうか。
まず、短いことが理由の一つに上げられると思います。私どもが日頃読誦している『般若心経』は、題名を入れても漢字二百七十六文字しかありません。もちろん、『般若心経』よりも短いお経もいくつかあります。たとえば、『舎利礼文』や 『延命十句観音経』はずっと短いお経です。けれども短すぎてもあまりありがたくはないのではないでしょうか。長すぎず、短すぎずで、忙しいせっかちな現代人にはちょうどよい長さなのかもしれません。
ところが、短いから内容が浅薄かというと決してそんなことはありません。仏教の教えの中でも最高究極の「空」について述べられています。
このあたりが現代日本においてはもちろんのこと、古来中国あるいは日本で盛んに信仰されてきた理由だと思います。
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